下宿先ではつかねずみを飼う

高校に入学して最初に下宿した先はごく普通の一般家庭です。
1階が茶の間と夫婦の寝室で、2階が二部屋有って一部屋がそこの家の当時中学生だった一人息子の部屋。そしてもうひとつある6畳間が俺にあてがわれました。

勉強机と引き出しが4つある安いタンス、布団一式、学生服と私服が少しだけ。
それが俺の持ち物の全てでした。
あ、あと教科書もあった。忘れてた。

ある時いつものように街をあっぽらかっぽらしてたらはつかねずみを売っているのを見てどうにも欲しくなり2匹購入した。
下宿先のおばちゃんに見つからないように部屋に持ち帰り、4段有るタンスの引き出しのひとつを開けて新聞紙を敷いてそこに入れた。

友達が出来た。それも2人.....いや2匹。

そうだ友達に名前を付けようと思い考えた。
いろいろ考えて、結局付けた名前は「フィフィ」と「ジュン」。
当時好きだった芸能人の名前を付けたのです。
フィフィは欧陽菲菲で、ジュンは五十嵐淳です。

五十嵐淳さん、後に淳子と改名しました。そして中村雅俊さんの奥さんになりましたね。
昔「日曜8時笑っていただきます」とかいう番組があって(確か堺正章さん出てたと思います)、それに出てた五十嵐淳さん見て、この世のものとは思えないほどの可愛さでノックアウトされてしまったのです。ほんと可愛かったです。
欧陽菲菲は「雨の御堂筋」が好きだったのとパワーがあって面白くて、そしてちょっとエロいとこ好きでした。
俺は男だけの兄弟の末っ子だったので、あんな姉ちゃんいたらいいなあ、と思ってました。

タンスの引き出しの中で動き回るフィフィとジュンを見るのはとても楽しかった。
(今考えるとよく下宿のおばちゃんに見つからなかったな。もし見つかってたら大変だった)

で、そのうちにフィフィとジュンを友達に見せたくなって、ある日学校に連れて行きました。
休み時間に友達に見せて散々自慢して、授業中は自分のロッカーに隠しておきました。
そして帰る時になってロッカーを開けたら... ...フィフィとジュン.....居ません。
焦って友達にも頼んであちこち探したのですが見つかりません。
結局その後も見つからなくて「逃げちまったんだ」と自分の愚かさを嘆きつつあきらめて数日経った後、隣の人が何か落としたのかどうかはわかりませんがロッカーを動かしたらロッカーの外側の奥に居たんです。はつかねずみが。
なんと、ペシャンコになって干からびていました。
「オーマイガー!」です。
隣のロッカーと壁の隙間に隠れていたのをロッカーがずれた時に隣の人が押したんでしょうね。
ほんとに可哀想ななことをしてしまいました。
いい気になって学校に連れていったのが間違いでした。
後悔してもしきれない、ほんと馬鹿でした。

結局ペシャンコになったのがフィフィなのかジュンなのかはわかりませんでした。
もう1匹はその後も見つからなかったのできっとどこかで生きていることでしょう。
いや生きてるわけないか。

48年前、昭和47年の多分6月位のことですからね。



AEAH73 雨の御堂筋③ 欧陽菲菲 (1971)1971・160917 Ver4L HD